大脳皮質基底核変性症介護|家族でもできる口腔ケア




大脳皮質基底核変性症介護|家族でもできる口腔ケア


大脳皮質基底核変性症の母は、病気の進行とともに自分から話すことが難しくなりました。
口を動かす機会が減り、食事も胃ろうで摂っているため、どうしても口の機能が衰えやすくなります。

それでも、口は体の入り口であり、外の世界とつながる大切な場所です。
だからこそ私は、母が少しでも口の機能を保てるよう、日々できるケアを続けています。

以前のブログでは嚥下マッサージとして
家族でもできる嚥下マッサージ
家族でもできる嚥下マッサージ(座位編)
を紹介しましたが、
今回は「家族でもできる口腔ケア」の記録です。
言語聴覚士さんから教えてもらった方法をまとめています。



1.口腔ケアが大切な理由



口腔ケアと聞くと「清潔にする」「虫歯や歯周病を防ぐ」というイメージが強いかもしれません。

もちろんそれも大切ですが、母にとってはこれとは別に大事な目的が2つあります。

それは 唾液の分泌を促し、味覚を守ること。

たとえ食事を口から摂らなくても、唾液が出て口がうるおうと、味覚や「外界との感覚」が保たれます。
ほとんどの人が持ち合わせているものですが、今の母にとって、それはとても大切な感覚のひとつであり、失いたくない機能です。

そしてもうひとつ。
話さない、食べないことで、知らず知らずのうちに、ケアをおろそかにしてしまうと、味覚はもちろんのことですが、口を開けたままの状態になり(筋肉の衰え)、舌にびっしりと苔がはえたり、舌がひび割れてタイル状になってしまうのだそう。
普段私たちは口を動かして使っているので、自然とできている口腔の仕組みなのですが、一度状態が悪化すると、それを戻すことがとても難しいため、現状維持を続けることがとても大切なのです。



2.口腔ケアの手順



準備するもの

  • 手袋

  • スポンジブラシ

  • 「口腔用保湿ジェル

  • バイトブロック(開口器)



誤嚥を防ぐために、ベッドの背を少し起こして行います。

手順

1.口の中の状態を確認する

どこに汚れがあるかを、まず目で確かめます。
口を長く開けていると疲れるのでできるだけ手短にするためです。

2.スポンジブラシで汚れを取る

スポンジブラシを軽く湿らせ、ジェルをつけて、奥から手前に向けて優しく回転させながら取ります。
・上あご
・喉の奥
・ほおの裏側
を順番に。

3.舌の白苔をケアする

舌の上に白い汚れがあれば、ジェルで湿らせてから奥から手前へ滑らせるように。
強くこすらず「ふわっ」と。

4.舌のトレーニング

スポンジブラシを舌の上に置き、母に「ベロで押し返してもらう」。
舌が動くので、唾液が自然と出てきます。
ゲーム感覚で回数を数えてみたり、「今日は力が強いね」など誉め言葉を伝えながら、飽きないようにやってもらいます。

5.歯の汚れを取る

歯やはぐきとの境目の汚れをこすり取ります。

6.頬の内側をマッサージ

人差し指でやさしく。
血流が良くなり、唾液も出やすくなります。

7.唇のマッサージ

スポンジでジェルでまんべんなく唇を湿らせます。
リップクリームでも代用できます。



3.「噛む」反射との付き合い方



口に何かが入ると人は反射的に噛んでしまいます。
そのためバイトブロックはとても大事です。

でも、それがある前提だと、どうしても母の尊厳を守れないような気がして。

口に開口器がある絵は、少し虐待チックに見えてしまう(個人的な感想)。

そのため、私は使わないでいます。
言語聴覚士さんもスタートして噛み癖がいつもよりも強いときには積極的に使っていますが、あまり使いません。

いつも母に「噛まないでよー」と声をかけてから始めます。

言葉は母にしっかり届いている気もします。
それでも反射で噛むことはありますが、顎を動かすことで唾液がよく出るため、あえてスポンジブラシの柄を少し噛んでもらうこともあります。

ただし 指を歯の間に入れないことは厳守 です。



4.ケアは「コミュニケーションの時間」



口腔ケアをしていると、母が舌を動かしたり、噛む力を見せてくれたりします。

そのひとつひとつが、母とのコミュニケーションになっています。
「噛まないでよー」
「上手にベロで押せたね」
顔を近づけるので、母の目にもしっかり娘の私の顔が見えているはず。

私の声掛けに、母なりの反応が返ってくる瞬間があります。
積極的なときもあれば、めんどくさそうなときもあって。

クスリと笑えるときもある。
顔の近くで笑うと母が「あー」と声を出します。
もしかしたら「笑わないでよ」って言ってるのかななんて、想像してみます。

言語聴覚士さんに教わった「舌でスポンジを押し上げるゲーム」は、母の舌の動き具合を確認するのにも役立ちます。

まとめ



特別な技術は必要ありません。
誰にでもできる口腔ケアです。

最初は、言語聴覚士さんのリハビリのタイミングで行っていたもので、毎日は施設の看護師さんが行っていたケアですが、私の方でもケアすることでひび割れていた舌が復活したり、嚥下訓練の際に、味を感じやすくなっているような効果が目にみえてありました。

介護にとって一番いけないと思っているのは、介護する側が知らないために、適切なケアをできずにいて、気づいたときには時すでに遅しという状態。

簡単にスポンジブラシと少しの時間があれば、誰でもできるのでなおさらです。

病気が進んでも、
話せなくなっても、
食べなくなっても
口の機能はケアすることで守ることができます。

母の「外の世界とつながる力」を少しでも残せるように、これからもできる範囲で続けていこうと思います。



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