大脳皮質基底核変性症の介護記録|家族でもできる嚥下マッサージ(座位編)




大脳皮質基底核変性症の介護記録|家族でもできる嚥下マッサージ(座位編)

このページでは、大脳皮質基底核変性症の母がお世話になっている言語聴覚士さんから教えてもらった「車いすに座った状態で行う家族でもできる簡単嚥下マッサージ」について記録しています。
このマッサージは後屈状態を和らげてから嚥下マッサージを行う簡単な方法です。

最近の母は後屈状態が進んでいます。
車いすに座って横から見ると後屈具合がよくわかり、「何とかしてあげたい」「少しでも楽にならないかな」と思い、言語聴覚士さんに相談してみました。

車いすに座った状態でご家族様にやっていただくと良い嚥下マッサージがありますよ。後屈姿勢をできる限りもとに戻しつつ嚥下マッサージを行うという流れです。


プロの技を家族の私ができるレベルにまで落とし込んでくれ、いまの母の状態に合わせて教えてくれることは、母にとっても私にとっても感謝しかありません。

車いすに座っている母にマッサージをすると、母と私の距離がぐんと近くなります。
スキンシップをきっかけに母の心の距離も近くなる気がします。
親子とはいえ、子どものときのように抱きしめたり、体をくっつけたりすることには抵抗があった私ですが、長い介護生活の間に母を車いすに移乗させることを行っているうちに、何の抵抗もなくなりました。

今では会ったときには母に積極的に触るのですが(たまに嫌そうな顔をします。どうしてぇー?!)、ベッドに寝ているときよりも、車いすにいる母との方が距離が近いので、私が小さい頃に母にしてもらった分には届かないけど、積極的スキンシップを習慣にしています。

痩せてしまったし体が硬くなってしまったので、真っ直ぐな母ですが、壊してしまわないようにしています。

人に見られるのはちょっと照れくさいので、こっそりです。

話はそれましたが、車いすの母にできるマッサージだと、散歩に出かけたときや通院時の待ち時間など多くの機会に恵まれます。

ベッド上で行う嚥下マッサージ(大脳皮質基底核変性症の介護記録|家族でもできる嚥下マッサージ<内部リンク>)と併せて、母が苦痛が少なく楽になる時間を持てたらいいなと思います。



1.後屈状態の母はしんどい?

大脳皮質基底核変性症の進行によりぎゅーっと肩に力が常に入った状態で顎があがり後屈状態になっています。
この後屈状態は母にとってどのような状態なのか言語聴覚士さんに尋ねてみました。

後屈状態の母はどれくらい辛いのでしょうか?
イメージとしては 自分たちが走った直後を想像してください。 呼吸が乱れた時、肩で息をすると思いますが そのときは息がしづらいですよね。 肩にぎゅーっと力が入って 筋肉が固まった状態で呼吸しているからです。

言語聴覚士さんはさも走った直後かのように肩を上にあげてぎゅーっと力を入れた状態で肩で息をし始めました。

後屈している状態と走った直後は、筋肉にぎゅーっと力が入っている同じ状態です。呼吸はできるけど呼吸しづらいですよね。

言語聴覚士さんはいかにも苦しそうに話します。

(うんうんわかるよ、私も肩に力が入って肩が上がってきちゃったよー)
人間にとって一番いい呼吸は、おなかのあたりにある横隔膜を上下する動きで呼吸するのが一番いいのです。浅い呼吸ではなく 胸が大きく上に動いて楽に空気が入っている状態が良いのです。

言語聴覚士さんは次に肩の力を抜いてゆっくりと息をしながら話します。

(ふー、確かに力を抜くと大きく息を吸うことができるー!)
お母さんも首回り肩回り胸回り鎖骨周辺がほぐれて楽になってくると呼吸が楽になってきてゆっくりの呼吸になります。なので後屈状態をできるだけもとに戻すためにマッサージをし呼吸をしやすくしてあげること。その良い状態でぐっと飲み込みが起こるようにベロのあたりをマッサージする流れで行きましょう。




2.マッサージステップ1(伸ばす)



母の背後に回り、後ろからマッサージを行います。

ここをできるだけ広げるというイメージで行っていきます。無理にやると筋肉がブチブチと切れてしまうので注意が必要です。


言語聴覚士さんが言う「ここ」とは、頭の後ろから首の付け根までの間のことです。

触りながら今動く最大の筋肉のひっぱりのところで止めて、少し待っていると、ちょっとずつ伸びてくるので、それを感じながら 前に押すのではなく上に引っ張る感じで行います。


もう少し詳しく言い換えて教えてくれます。

出っ張ってる骨の下のくぼみの部分から肩に向けて筋肉がついている。このくぼみの部分がこの筋肉の一番上になるので、ここに親指をあて、上にあげる。顎が下に向くように、ぐーっと上に押しあげてあげる。


時間をかけて丁寧にやってくれています。母は気持ちよさそうにしています。

時間を掛けながら筋肉の力が抜けてくるのを促す感じです。以前伝えた横になっている状態で行うよりご家族様にはこちらの方がやりやすいと思います。





3.マッサージステップ2(押す)



マッサージステップ1(伸ばす)だけでも、後屈状態が改善されてきました。

ちょっと伸びてきたら後頭部を押して伸ばします。

そして、言語聴覚士さんは見本を見せてくれました。



簡単に言えば、「あごをひいて伸ばす」プラス「後頭部を押して伸ばす」です。


しばらくして、母の肩から胸のあたりを注意深く見ていました。

かなり胸が上に大きく動いて普段より楽に空気が入っている状態になりました。このように硬くなっていた筋肉が柔らかくなってくると呼吸も楽になってきます。


後屈状態が改善され、横から見ても「上を向いちゃってる!」とは感じなくなりました。
母の肩の力が抜けているように見え、呼吸も穏やかになったように感じました。



4.マッサージステップ3(ベロ)



顎の下を触ってベロを動かしてあげてください。顎の下を押すとベロがぐっと前に出ます。唾液の促進になります。

母は言語聴覚士さんが触るのに併せて「べー」「べー」「べー」としている様に見えます。


べろがあって、その下の軟骨、この軟骨がその下の軟骨につながっています。この3つが上にぐっとあがって人間は飲み込みが起こるのです。


ベロが硬くなると上へのあがりが弱くなって飲み込みが弱くなってしまう。特に使わなくて硬くなってくると、動きが不十分になってしまい、あがりが弱かったりしてむせるようになるのです。だからベロを動かすマッサージをしてあげる方がいいのです。

私のような初心者でも軟骨を簡単に探し当てることはできるのですか?むずかしそう。
マッサージでは軟骨は気にしなくても大丈夫です。ベロを上に動かすマッサージだけで大丈夫です。ベロが下の軟骨と繋がっているので間接的に下の軟骨も一緒に動いてくれます。





まとめ

大脳皮質基底核変性症の母の後屈気味を和らげながら行う嚥下マッサージを言語聴覚士さんに教えてもらいました。

車いすに座った状態で行うマッサージですが、言語聴覚士さん曰く、ベッドで横になっているときよりもやりやすいとのこと。
車いすに座っている母に行うと、母の近くに寄れるので私もわかりやすいし、顔の近くで声掛けもしやすく母にしっかり届きそうです。

散歩のとき、通院時の待ち時間のとき、いろいろなタイミングで行えるのも良いです。

後屈状態は筋肉に力が入り続けている状態だけではなく、呼吸にも影響があることを知りました。
浅い呼吸を繰り返していることと同じで深い呼吸に戻してあげることが教えてもらったこの後屈を和らげるマッサージでできます。


何よりも印象的なのは言語聴覚士さんにマッサージをしてもらって後屈が和らいできたときの母の表情。
この母の表情を形容するのに、簡単な言葉では言い尽くせないくらいの穏やかな表情になったこと。

リラックスできたのかな。

母が少しでも穏やかな時間を持てるように日常に家族で行うマッサージを取り入れていきます。

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