大脳皮質基底核変性症|闘病記|通院の様子
このページでは大脳皮質基底核変性症を患う母の闘病記、母と医師の会話や医師からの説明など通院時の様子について焦点をあてて記録しています。
母は月に一度「大脳皮質基底核変性症」の通院<内部リンク>を続けています。
受診には特定医療費支給認定<内部リンク>を受けています。
月に一度の通院を続けることができることは喜びです。
なぜなら母の病気が進行してしまえばいつか病院へ行くことができなくなるかもしれないからです。
そして施設からの外出「通院」は母にいろいろな刺激を与えてくれます。
移動支援で迎えに来てくれるヘルパーさんと1か月ぶりのほのぼのとしたふれあいがあります。
他には
優しいヘルパーさんと会話の中で気遣いをする
ヘルパーさんに話しかける
ヘルパーさんの1カ月ぶりの近況を聞く
病院に来ている他の人の様子を見て「私もあんなふうになりたい」と自分を他者に置き換えて考えることができる
施設以外のトイレに行くことで、勝手の違うトイレに対応しようと試みる
まったく知らない受付の人と話をする
自分の番が来るまでじっと待つことができる
掲示板から自分の受診番号を見つけ出す
処方された薬が前回と変わっていないか確認する
先生に自分の体調を端的に説明する
先生に薬を要求する
先生から聞かれる質問に対して頭の中で考えをまとめる
お金を支払う
お友達にお土産を買う
母とヘルパーさんと私の3者間で会話をする
いつもいる施設の中でできること以上のことが通院の日はできます。
母が自分の力でやりきることができる力があることを通院の日は実感できます。
コロナ対策で施設への面会が規制されている中で通院は母が私と長時間一緒にいることができる貴重な時間です。
難病情報センター:大脳皮質基底核変性症とは<外部リンク>
1.通院の目的
今の段階での通院の目的は
毎日飲む薬をもらいにいく
現在の母の症状を医師に伝える(母から、私から)
医師の観察
母の訴えを聞いて追加する薬があれば処方してもらう
この4つです。
私の通院の付き添いの目的は
母の症状を説明し医師から情報を得ること
医師から得た情報を施設やケアマネに伝えるための質問
母との外出を楽しむこと
母が外出による経験をリハビリにすること
この4つです。
2.母と医師と私
医師は母と会話をしながら母の体の様子を観察します。
- 先生、話しづらいんです
- そっか、話すときに辛いんだね
- 頭の中がぼわっと熱い、息が苦しい
- そっかそっか、頭の中がぼわっと熱い感じなんだね
そして、私に向き直って詳しく説明をしてくれます。
- この病気の特徴は言葉が出てこなくなります。
頭の中ではちゃんと理解していても話をしたくても言葉が出てこなくなります。
あーとかうー-とか言うわけではなく、ぴたりと何も言わなくなって静かになります。
これが起きるのが次の段階へ進む大きな変化です。
いまのように自分の気持ちを話し難いなりに、話し出すのがゆっくりでも説明できるというのは、病気がゆっくり進行しているものの大きな転換期として捉えてはいません。
次は全く話すことができなくなるということが起きます。
頭の中ではわかっていても話すことができないという段階から、いずれわからなくなるという段階へ移行します。
ゆっくりゆっくり進行するのがこの病気の特徴で個人差があるので今の状況を見ていつくらいにそうなるとは断言できません。
ただ言葉がでなくなるのが次の段階だと思っています。
- 先生、よく転ぶ、転びそうになる
- 転びそうになったり、転ぶことは多い?
- 最近はよく転ぶし転びそうになることも多い
そして、私に向き直って詳しく説明をしてくれます。
- 傍から見るとまっすぐ座っているように見えますが、姿勢保持障害がありますのでそのまま傾いたまま倒れていきます。
自分で立て直そうとすることができないので。
また自分は病気で立つことが難しいとわかっているのに立ち上がって転んでしまうときには「病態失認」「半側空間無視」が起きています。
簡単に言えばその瞬間はすっかり忘れてしまうんです、自分が病気だということを。
「ひとりのときに立ってはいけない」とわかっていてもその瞬間にすっかり忘れてしまって行動するので転倒する回数が多くなります。
- 先生、便がにくくて困る
- 出にくいなと思ったときだけ薬を増やしてみるのはどうかな。
何滴だったらあなたの便秘に効くよというのは僕にもわからないんだ。
人によって違いがあるからどれくらいがいいのかということはわからないなー。薬の量を調節してみてくれる? - はい、調節してみます
そして、私に向き直って詳しく説明をしてくれます。
- 便秘もこの病気の特徴です。
そのときによって薬の量を調節しながらいきましょう。
- 先生、体が辛いからもう病院へ来ることができないかも
- えーそんな寂しいこと言わないで。僕は会いたいから来てほしい笑
- でもわからない、今度また来れるかな
- 娘さんにこうやって一緒についてきてもらってできるだけ来てね。待ってるよ。
そして、私に向き直って詳しく説明をしてくれます。
- 何度も伝えているのでわかっていると思いますが、この病気の治療法がありません。
進行状況も人によって違うため、何か起きた時にどうするのがいいのか考えましょう。
来ることもリハビリのひとつなのでこうやって外の刺激に触れながらできるだけ同じ状態が続くといいですね。
医師は上手に母と会話をしながら母からの発話と発話のタイミングなど「話す」ことを観察しています。 同じように私にも母の状況をわかりやすく教えてくれます。
3.周囲への説明
医師が私にわかりやすく説明してくれるので私は通院後は必ず施設の人やケアマネさんに先生の話として共有します。
なぜなら
同じ病気の人がいないため、周りの人たちがどのように母に接していいのかわからないときがあるようです。
私も母がどうしてそうなのかわからず誤解をすることがあります。
母に私たちができることを要求してもできないものはできないので、そのできない理由が病気からくるものであるときは、私が母に代わりに周囲の人へ説明します。
「病気だから仕方がない」ではなく、「この病気の症状のひとつにはこういうのがあります。母から聞いたり医師からの聞いた説明によるとこんなことが起きているようです」と伝えます。
まれな病気ですから知ったから今後に活かせるかと問われればYESではないかもしれません。が、病気の症状を知ることで相互にずれる感覚を補うことができたなら病気が原因で起きるトラブルが少なくなるかもしれないと思うからです。
- 転ぶ、転ぶ、転びそうだから助けて
- 大丈夫ですよ、まっすぐに座っていますよ
- 怖い、転んじゃう、ぎゃー
- 転びそうじゃないですよ?????
対応に困った施設側からこんなふうに言われたことがありました。
- お母さんは「転ぶ、転ぶ」と何度も訴えますが、転びそうではありません。
私たちもできるだけお母さんに寄り添いますが、他の方もいらっしゃるので転びそうではないのにずっとお母さんだけに対応することはできません。
お母さんは自分を優先してほしいがために言っているように見えます。
- 母が患っている難病「大脳皮質基底核変性症」の症状に姿勢保持障害立ち直り反射障害もあります。
私たちは倒れそうになれば自分で姿勢を正すことができますが母は病気の症状でできません。
母が言うには体が傾いてそのままビルの屋上から落ちるような気がするらしいです。
ビルの屋上から落ちる感覚はわかりませんが自分がと想像すればどうしても大きな声を出してしまう気がします。
周囲にもご迷惑をおかけしていましました。
と謝罪を含めて説明しました。
- お母さんは同じことを何度も何度も言います。
こちらもその都度やっていますがみんなが少し困っています。
- 母が患っている難病「大脳皮質基底核変性症」の症状に「保続」という症状があると通院先の先生から聞いています。
本人は特段悪気はないのですが、同じことをぐるぐる頭の中で考える、うつ症状があるそうです。
いつもそうではないのですが、気になるとそればかりを考え続けるのでそこからなかなか抜け出すことができないと先生から聞いています。
周囲にご迷惑をおかけしていましました。
と謝罪を含めて説明しました。
母が悪意があってやっていることではないということ、病気の症状のひとつであることを丁寧に説明します。
母の行動(病気からくる症状)を少しでも誤解されることがありませんように。
心を砕いています。
まとめ
「大脳皮質基底核変性症」と診断された母の通院の様子とそこで医師から聞いた情報を周囲で助けてくれる人に共有する様子を記録しました。
通院は母にとって刺激を受けれるのでリハビリ効果があるというメリットがあります。
付き添いの私には直接医師に質問できる機会があります。
そこで得られた知見を周囲に伝えたり、何か事が起きた時に母から状況を聞き気持ちを聞き、それが悪意ではないと判断できるものについては、周囲に伝えます。
私の押し付けかもしれませんが、「相手を知る」ことが相互の認識のずれやちょっとしたトラブルを回避できたらと考えています。
母が「大脳皮質基底核変性症」と診断される前の長い時間は、母の行動が理解できず軋轢で私は気が滅入りました。
診断された後にそれが症状のひとつだと知ったとき、もし早くからそれを知っていたなら、それを理解しようとしていたなら、母と私の関係性も改善できたのではないかと後悔しています。
生きていく上で周囲との関係性が良好であれば病気の辛さが少しでも軽減できるかもしれません。
母が生活している場で快適に過ごすことができますように。
少しでも良い思い出や記憶ができていきますように。
他の記事はこちらから…介護記事一覧