月1の通院は先生との情報交換会

月に一度、大脳皮質基底核変性症の状態報告を兼ね痛み止め薬をもらうために脳神経内科に通院をしています。
この通院日は母の病状の進行具合を主治医に診てもらう大事な日。
付き添いの私にとっても大事な日。
なぜなら難病につき症状や進行具合などわからないことが多いので主治医に質問できる日だからです。
母のことを理解できるチャンスの日だからです。

  • 母と主治医のコミュニケーションを最優先
  • 症状の疑問点を主治医に確認する用意をしていく


1.母と主治医の会話

先生、痛くて痛くて
痛み止めは効いてい感じはある?


先生、便秘で困ります
薬は今何滴で使っているの?
多いと下痢になるし、少ないと便秘になる
体が固まっていくと腸も固まっていくので適量がむずかしいなー

母は自分が気になっていることを、ゆっくりゆっくり質問していきます。
主治医はそれに応える形で母の顔を診ながら丁寧に答えをくれます。
言葉が出にくくなっているもののコミュニケーションは取れています。

やり取りの中で主治医は様子を観察し症状を確認しています。

母は自分の質問の回答に納得するまで聞きます。
言葉が足りなくて主治医が首をかしげるときには私が補足します。
例えば今回は便の硬さの表現や転びそうになるときの表現など。
補足があるので母も安心して主治医に伝えようとします。
母が主治医と会話をすることを最優先し極力私は何も言いません。
言い淀んでも主治医も私も待ちます。

人と話をしようとする気持ち
自分の気持ちを伝えるために言葉を選ぼうとする気持ち
人から話を聞いて自分で返事をしようとする気持ち

これらは特段意識しなくてもできることかもしれません。
でも母がこれをこの先失っていくことがわかっているので

それを少しでも長く引き延ばしていくこと
うまくできないことを待つこと

それが私が心がけていることです。
主治医とそのような話をしたことはありませんが、私の気持ちを理解してくれているかのような主治医です。


2.今回の質問は精神面の症状をメインにする

大脳皮質基底核変性症の症状の特徴である精神面について質問を用意していきました。

  • 精神面で顕著に現れる症状(人格変化)
  • 「言葉が出ない」症状(失語)


大脳皮質基底核変性症の精神症状として「人格変化」というものがあるとネットで情報を知ったのですが、どういうものですか?
①うつ症状 これは強く出ると言われています。
②保続(ほぞく) これは同じことを言ったり同じ行動をすることです。
③意欲の低下 全くやる気がなくなってしまって静かになります。食事を取る意欲もなくなって生命の維持が難しくなることもあります。
「言葉が出ない」という症状について、どのようになっていくのですか?
お母さんの場合は右手側が固縮、左脳が萎縮しています。
左脳にある言語要素の処理にかかわっている皮質に障害が起きていきます。
そしてこの病気の最大の特徴である「ゆっくりゆっくり進行」します。
言葉を発すること、理解することに障害が出てきます。

母は話すと「疲れる」とよく言います。
実際に言葉が出てこないのか考え込むようなそぶりをし、息絶え絶えになって肩で息をしているようなときもあります。

主治医は
「お母さんの場合、ここしばらく様子を見ているとまだそんなに言葉の出が悪いという印象はなく自分でちゃんと会話しようとしているし実際私との会話も成り立ちます。
多少発話までの間はありますが沈黙が続いて会話にならないということはありません。
脳にある言語の部分は今のところちゃんと機能しています。
それよりも右手の固縮がかなり強い、おそらく右側の足もずいぶん固縮が始まって痛みが強く出ているのではないかと思います。」

じっと聞いていた母。

主治医との会話

「先生はよくわかってるなぁ」

主治医が自分の症状を理解してくれたと感じての発言です。
あまりにも突拍子もなかったので主治医も大笑い。


3.大脳皮質基底核変性症の症状(強い痛み)

強い痛みのため痛み止めを処方してもらいます。
それもあって1か月に1度の通院は欠かせません。

母が主治医に自分をちゃんと診てもらっているという安心感を持つことができ、辛い病を抱えながら毎日を過ごすことができています。

この強い痛み。

「先生、生きているのが辛い。早く死にたい。毎日痛みを我慢してずっと寝ているだけ、楽しいことなんて何もない。」
今回の診察時にも母は言いました。それくらい痛みが強いのもこの病気の特徴です。

主治医は
「確かに手がこれだけ固縮すると固縮による痛みがあるかもしれません。
でもお母さんがひどく痛がっているのはその痛みは、実は右側で感じ取っている違和感が原因です。
この違和感を脳が「痛み」として受け取っています。
そのため処方している痛み止めがこの違和感に効いているとは思いません。
痛みではなく違和感を間違って脳が受け取っているので痛み止めは気休めでしかないのです。
お母さんの痛みが痛み止めの薬で解決しないのはその通りなのです。」


そうなんだ、だから薬を飲んでも「痛くて辛い」と言うんだ


「こんな病気になっちゃってごめんね、るしこちゃんに苦労をかけちゃって」
母は今日も言いました。

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