大脳皮質基底核変性症介護|手に現れている強い緊張を緩めるためのボトックス注射2回目




大脳皮質基底核変性症介護|手に現れている強い緊張を緩めるためのボトックス注射2回目


今回の通院は、2回目のボトックス注射でした。
注射の目的は大脳皮質基底核変性症の母が、長い間ぎゅーっと握りしめたままになっている右手の緊張を和らげるためです。

前回の注射から、約3か月の間隔を空けて行われます。

ボトックス注射は、母にとって決して楽なものではありません。
腕の太い筋肉に打つため、強い痛みを伴います。
それでも、少しでも筋緊張がゆるみ、日常が楽になるならという思いで続けています。

大脳皮質基底核変性症と診断されて6年半を経過した母ですが、 「前回のボトックス注射の効果が出ているので2回目を打ちましょう」と主治医からの勧めを受けました。
その2回目のボトックス注射について記録しています。

※ボトックス注射1回目の記事は…こちらから





1.2回目のボトックス注射と医療的判断



前回の注射では、わずかではありますが効果が見られました。

手と体の間に少しだけすき間ができ、施設のスタッフさんから
「服の着脱が、ほんの少し楽になりました」
と教えてもらいました。

ただし、

  • 手を前に出す

    • 自分で手のひらを開く

    といった、以前できていた動きが戻るところまでは至っていません。

    「もっと早く対応できていれば…」
    そんな思いがよぎることもあります。

    診察室に入ると、すぐに主治医の観察が始まりました。
    今回は

    • 「前回と同じく右手への注射」

    • 「量を少し増やすことで、効果が高まるかもしれない」

    という方針で考えられていました。

    ところが主治医から、
    「左手の固縮が、かなり強くなっていますね」
    という言葉がありました。

    確かに、最近の母には左手にも変化が現れていました。



    2.進行として現れてきた変化



    左手の変化

    • 手のひらを強く握りしめ、爪が皮膚に食い込み血が出ていることがある

    • 話しかけられると、左手を少し上げて返事をしていたが、動きがとても小さくなった

    • 左手に触れると、さらに力が入る(触られるのを拒んでいるように感じる)

    変化は、左手だけではありません。


    言葉の変化

    • 以前は話しかけると「あー」「おー」と声を出していた

    • 最近は、声を出さず目を開けるだけで反応することが増えた

    • 自分から口を動かし「あー(うー)」と何か伝えようとすることが少なくなった

    目の変化

    • 以前は、力強い視線に意思を感じていた

    • 最近は、見ようとはしているが、どこかうつろな表情が増えてきた



    「秋口から、進行の幅が大きかった気がします。 がくんと落ちたような感じがして…」
    そう主治医に伝えました。

    ボトックス注射2回目を打つ

    今回のボトックス注射は、主治医の判断で
    右手に7割、左手に3割という配分で行うことになりました。
    筋電図を使った注射方法もあるそうですが、
    母の場合、腕の内側を安定して見せることが難しいため、通常の注射を選択しています。


    ボトックス注射後の変化

    注射直後から、左手には変化が見られました。
    爪が食い込みやすかった左手が、力を抜いている時間があるように感じられます。
    触れると反射的に力は入りますが、以前ほどの強さではありません。

    右手は大きな変化はありませんが、
    中指・薬指・小指の力が緩んだ状態を保てており、現状維持といえます。

    3.失われていくものと、今ある時間



    主治医から、以前こんな話をされました。

    「冬頃には、もしかしたら言語の部分は、なくなってしまうかもしれません」

    その頃の母は、

    • 話しかけると手を上げる

    • 私の目をじっと見る

    • 目で意思を伝えようとする

    • 内容によっては「あー」と声を出す

    そんな反応がまだありました。

    だから正直、「数か月でそんなことが起こるはずがない」と思っていました。
    けれど、悲しいことに、主治医の言葉通りの進行になりつつあります。

    今は、

    • 顔を近づけて耳元で話す

    • 私の顔が見える位置に立つ

    そんな工夫をしながら、母と向き合っています。

    スキンシップの大切な時間。
    たまに私が面白い話をすると、
    「あー」と声を出したり、左手を少し上げたり、
    ほんのわずかでも反応してくれます。

    これが、いつか完全になくなってしまう日が来る。
    そう思うと、胸が締めつけられます。

    主治医はこうも言ってくれました。

    「この病気は、時間をかけて進行します。 だから、時間はあります。お母さんと向き合う時間があります」

    病気の初期、母との関係が壊れかけていたことを知っている主治医だからこその言葉でした。

    「後悔しない介護を」
    そう心に決めてここまで来ましたが、正直に言えば
    後悔しない介護なんて、どこにもないと最近になって気づきました。

    では「後悔しない介護とは何か」と聞かれても
    私には答えられません。

    ただ、母がよく言っていた言葉があります。

    「私は、娘のるしこちゃんと一緒に過ごしたいのよ」

    「この難病になったからこそ」と言ってしまうのは不謹慎であるのですが、 母と二人三脚で歩くきっかけになりました。

    少しでも母の心に届いていたら。
    そして今でも母が母らしく生きていることができていたら。

    今日も母のところへ顔を出してきます。




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