老化の誤嚥と難病ではどう違う?大脳皮質基底核変性症の嚥下障害と誤嚥性肺炎|膿胸から学んだこと③
母が膿胸と診断されました。
これにより、「嚥下障害」「誤嚥性肺炎」についてより詳しく知りたいと思い、主治医に聞いてみました。
歳を重ねていくと、飲み込みに失敗して、むせて涙目になりながら咳をすることがあります。
それで「歳を取ったな」「以前はなかったのに」とふと気づきます。
これがいわゆる「誤嚥」なんだなって思って
老化したんだから喉の筋肉が弱ってきたのかなと漠然と想像していました。
でも、実際には老化と難病の違いについて、詳しく理解していませんでした。
老化によるものと、母の難病「大脳皮質基底核変性症(CBD)」が引き起こす「誤嚥」とはどう違うのか、主治医の言葉とともに記録します。
1.主治医との会話
- 老化による「誤嚥」と母の場合の「誤嚥」は何が違うのですか?
- 老化は喉の動きは悪くなります。
大脳皮質基底核変性症は体性感覚野(たいせいかんかくや)がやられるから、喉の動きが強制的に悪くなるのです。
私たち年代がたまにむせるのは老化の方です。
- 母にとって冷たい刺激は有効ですか?
- お年寄りの場合、冷たいアイスクリームとかヨーグルトだと喉に咽頭刺激で冷たいという刺激が入るから、それでむせなくなるんですよ。
喉の反射でクッと閉まるんで。
でも、大脳皮質基底核変性症の人は冷たいもの入れても喉が閉まらないんですよ。
脳の働きが麻痺してるから。
刺激が入って冷たいことに反射しても脳からの指令が。
それは老化だったら、その冷たいものが入って反射は落ちているかもしれないけど、ちゃんと反射は出るわけですよ。
- 母の膿胸との関係性は?
- これとは別に誤嚥性肺炎になる原因のもう一つはよだれ。
どうしてもある一定数、喉が動かないから時々肺に入っちゃうわけですよ。これは老化でも起きます。
大脳皮質基底核変性症の場合、脳の半分が動かない。
片方側が全然反射がないんで少しずつですが入っていきます。
唾液は雑菌が多いんで肺炎の原因になるわけです。
たまたま風邪の菌が口に入ってそのままツーっと流れていっちゃって、それで炎症を起こした可能性も十分あります。
2.老化による嚥下障害は「機能の低下」
加齢による嚥下障害は、喉の筋力や反射が少しずつ弱くなることで起こります。
つまり、動きそのものが全体的に「ゆっくり」「弱く」なるイメージです。
この場合でも、冷たいアイスクリームやヨーグルトのように、喉への刺激がある食べ物では、反射が働いてむせにくくなることがあります。
冷たさや刺激が喉に伝わることで、「クッ」と喉が閉まる反応が出やすいからです。
もちろん、年齢とともに反射は落ちます。
それでも、反射そのものは残っているのが老化による嚥下障害の特徴です。
3.大脳皮質基底核変性症による嚥下障害は「脳からの指令の障害」
一方、大脳皮質基底核変性症では、脳の働きが障害されます。
特に、体性感覚野を含む大脳皮質の異常によって、喉に刺激が入っても、その情報をうまく反射につなげられなくなります。
そのため、冷たいものを口に入れても、喉が閉まる反射が十分に起こらないことがあります。
これは単なる「喉の衰え」ではなく、脳から喉への指示がうまく伝わらないことが大きな違いです。
医師の話をかみ砕くと、
老化は「喉の動きが弱る」
CBDは「喉を動かすための脳の働きが壊れる」
という違いがあります。
さらにCBDでは、脳の片側に強く症状が出ることもあり、片側の反射がかなり落ちることがあります。
そのため、飲み込みのバランスが崩れ、食べ物だけでなく唾液まで誤嚥しやすくなります。
4.誤嚥性肺炎の原因は「食べ物」だけではない
誤嚥性肺炎というと、食事中に食べ物が気管に入る場面を思い浮かべやすいですが、実際には唾液も大きな原因になります。
唾液には口の中の細菌が含まれているため、これが肺に入ると炎症を起こしやすくなります。
CBDでは、喉がうまく動かず、唾液が少しずつ気道に入ってしまうことがあります。
老化でも同じことは起こりますが、CBDではその程度や頻度が強くなりやすいのが問題です。
また、口の中にたまたま風邪の菌などが入っていた場合、それが唾液と一緒に肺へ入って、誤嚥性肺炎の引き金になることもあります。
つまり、誤嚥性肺炎は「食べ物を誤嚥したから起きる病気」だけではなく、母のように「胃ろう造設」していても唾液と細菌の誤嚥でも起こる病気です。
まとめ
老化による嚥下障害は、喉の動きや反射が少しずつ弱ることで起こります。
一方、大脳皮質基底核変性症による嚥下障害は、体性感覚野など脳の障害によって、喉を動かすための反射や指令そのものがうまく働かなくなるのが特徴です。
そのため、同じ「むせる」でも、老化ではまだ反射が残っていることが多いのに対し、CBDでは刺激を入れても反射が出にくいことがあります。
主治医の話を聞いて私なりに例えていえば
老化:電池が弱って、反応が遅くなる。
CBD: 電池だけでなく、配線やスイッチのしくみも壊れて、動きの指示がずれる。
ということだと思います。
大脳皮質基底核変性症の場合、リハビリなどを行ってできるだけ機能を落とさないで維持することが可能なことと、そうでないことがあるということです。
でも、母のように胃ろうの造設で食べ物の取り方の工夫をしたり、口腔内を清潔にしておくことなどできることはあります。
それでも、誤嚥に対して意識を向け続けることは、介護する側にできる大切な予防力のひとつだと感じています。
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