大脳皮質基底核変性症|記録(様子ノート)




大脳皮質基底核変性症|記録(様子ノート)

このページでは、大脳皮質基底核変性症の母の記録(様子ノート)について記録します。

ケアマネさんの声掛けで始まった「母の様子が書かれたノート」を
私は「様子ノート」と名付けて呼んでいます。

この「様子ノート」は
母がお世話になっている施設の部屋に訪れる
外部のサービス提供スタッフさんが
母の様子を記録してくれているものです。

以前は母からたいていの話が出てきたのですが、
今は大脳皮質基底核変性症の症状のひとつである失語も進み、
その日その時の様子が数行で書かれたこのノートのおかげで、
私は母のことをもっと知ることができています。

施設内の様子は施設側が提供する形の決まった記録用紙が別にあり
(これは施設業務上必要なもの)
体温や血圧など書かれているのですが、
ここでいう様子ノートとは別になります。

様子ノートは
部屋に訪問してくる言語聴覚士さん、
理学療法士さん、
マッサージ師さん、
歯医者さん、
美容院さんなどの
スタッフさんによって
書かれた文章が並んでおり、
スタートから1年が経過、現在2冊目の半分を過ぎようとしています。





1.気づきの記録



様子ノートがスタートした頃、
私は「ノートへの記入だとアナログでみんなの手を煩わせるかも。
スマホを通じて書き込むところを作ろうかな」
と思っていました。

そうすることで、私は施設に行けないときにも
ネット上でいつでも確認できるからです。

でも、様子ノートが運用されて
書き込みが増えていくうちに
大きく気持ちが変わりました。

様子ノートの文字を見ていると、
ひとそれぞれで、
その人となりが出てきて、
母との様子も文字や文章から
いろいろと想像できてくるので不思議なものです。

例えばある日のマッサージ師さんが書いた様子ノートでは



今日は訪問時からやや興奮気味な様子で時折大きな声を出していましたが、次第に落ち着いて目を閉じていました。そのうちウトウトし始め呼びかけに対して返事がなくなりました。



数行で様子を書いてくれていますが、
その場所にいなくても、
そのマッサージ師さんと母のやり取りや空気感を想像できるのです。

私が会ったことがない人でも
自然と想像し、文字からその人の声が聞こえてくるから不思議です。

別のマッサージ師さんのメッセージには



施術前は起きていらっしゃいました。こちらの声かけに反応し一緒に運動を行って頂くことができました。頸肩上肢のマッサージ中にはウトウトされ、気持ち良く受けていただけたようです。




そっか、母はリラックスできたんだ
スヤスヤ寝息を立てて寝れたのなら
痛みや辛い時間を忘れることができたんだ

など様子ノートを読みながら母の様子を想像することができるのです。

こうやって母がひとりの人として扱ってもらい、
会話をうまくすることができないとわかっていながらも、
母に耳を傾け、
体の様子に向き合ってもらえている時間の存在は
今の私を勇気づけるきっかけになっています。

2.繋がる記録




母の後屈状態が進んでいるような気がします。力が常に入って辛そうなのですが、マッサージの間だけでも入っている力を和らげることはできないでしょうか?



とマッサージ師さんに向けて私は様子ノートに書き込みました。

それは通院時に主治医から

右側が特に固縮し、首から肩、手にかけて常に力が入っている状態を良くすることはできません。
この先もっとガチガチになっていきます。
マッサージで緊張をほぐすことで、その時だけでも楽になることがあります。

と聞いたからです。

すると、母のもとを訪れるマッサージ師さんから



頸の傾斜が強かったので重点的に行いました。最後にはすやすやと寝息を立てていました。気持ち良い様子でした。





右上肢の緊張が強く、動かすことが少し嫌な様子がありましたが重点的に行いました。


など 手書き文章が様子ノートに書き込まれました。

すぐに対応してくれたおかげで、
母にとってその時点からすぐに最適なリハビリを受けることができ、
気持ち良い状態を素早く手に入れることができたのは
様子ノートのおかげだと感じます。




今日も口腔ケアストレッチを行いました。ストレッチ後は嚥下回数が増加していました。



これは言語聴覚士さんが書いてくれた母の様子です。

前回の言語聴覚士さんのリハビリ時に
ストレッチ方法を見せてもらったのです。
そしてその続きの様子が書かれていたわけです。


月一の訪問があるケアマネさんにおいては、
母の部屋を訪れるときは必ずこの様子ノートを読みます。

私が話す母の様子を聞きながら
「母の今」を
短時間で深く知ってくれるのです。

そうすることで、
母と私の目標である「体の機能をできる限り持ち続ける」
をケアマネさんも一緒に考えてくれています。

3.まとめ

ひとつのリハビリは点ですが、
前回のリハビリと今回のリハビリが繋がり線となり、
またマッサージ師さんが書いている記録を言語聴覚士さんが読み、
その逆もあり、
体のことと口周りのことが繋がり…

私が主治医の言葉を書き込むことで、
医療とリハビリの繋がりへと拡がり、
その繋がりを
ケアマネさんが母の介護を包括的に見てくれて…

「私は母の介護チームの一員である」というのは、
この様子ノートが中心位置にあってこそなのかもしれません。

たとえ難病で治らなくて辛い思いをしても、
最期のそのときを迎えるまで
命のある限り生きなければなりません。

そのときまで母は母らしく
時間を過ごしてほしい
と私は手助けをしています。

多くの記録が書かれた様子ノートは
ただの記録にとどまらず
母の未来を作っていくための土台であり、
母の未来や希望を支える人と人を結ぶ橋渡しになっている
と信じています。




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